札幌ではたらく情シスのブログ

札幌で働く情シス/社内SEです。3DやxR・ドローンにはまっています。中小企業診断士試験受験生。

未経験から情シスに転職するなら、ヘルプデスク経由が近道だと思う

SIerから社内SEに転職して、ずいぶん経つ。2016年に札幌で転職活動をしたときは、面接を50回近く受けた。最短は5分だった。

おかげで、求人票を読む目だけはそれなりに鍛えられたと思う。今回は、未経験から情シスを目指す人に向けて、入り方と求人の見方をまとめておく。

未経験の入口は、だいたいヘルプデスク

情シスは未経験でも目指せる。これは本当だ。ただ「未経験歓迎」と書いてあっても、中身は求人ごとにまるで違う。

現実的なのは、ヘルプデスクや社内のITサポートから入るルートだと思う。「パソコンが動かない」「プリンターがつながらない」「パスワードを忘れた」。この手の問い合わせを毎日さばくうちに、ネットワークやアカウントの仕組みが体で分かってくる。

情シスの仕事の半分くらいは、結局この延長にある。地味だが、遠回りではない。

ここからは、求人を選ぶときに見ておきたいことを3つ。

1.「ひとり情シス」の求人は、未経験には重い

少人数の会社で「社内のITをお任せします」という求人は、ほぼ実務経験が前提だ。未経験可と書いてあっても、入ったら相談相手がいない、ということが起こりうる。

自分も今は小さな会社で、ひとり情シスに近い。PCの手配からネットワーク、クラウドの契約まで、だいたい全部やる。経験があっても迷う場面はある。これを最初の職場でやるのは、だいぶきついと思う。

担当者が自分ひとりになりそうな求人なら、1社目としてはやめたほうがいい。

2.ヘルプデスクは「電話を取るだけ」か確かめる

ヘルプデスクにもいろいろある。受電して、内容を記録して、別の部署に回すだけの仕事もある。それだと、何年やっても設定や構築の経験がたまらない。

見るべきは、問い合わせのその先に関われるかどうか。PCのセットアップ、アカウントの発行、手順書の更新。こういう作業が業務内容に書いてあれば、次につながる。

求人票に書いていなければ、面接で聞けばいい。聞いて嫌な顔をする会社なら、それも一つの答えだ。

3.面接で「困ったとき誰に聞けますか」と聞く

教育体制があるかどうかは、求人票の「研修あり」より、面接の受け答えで分かる。

  • 入社後しばらくは、誰と一緒に仕事をするのか
  • 手順書や過去の記録は残っているか
  • 夜間や休日の対応、当番はあるか

このあたりを具体的に聞いてみる。答えがふわっとしていたら、たぶん入ってからもふわっとしている。

ちなみに、面接で見られるのは技術の知識より「相手の話をどう聞き出すか」のほうだと思う。前職の接客や事務の経験も、ここでは立派な材料になる。

入ってからの1か月は、聞いて書く

無事に入れたら、最初の1か月は覚えることより、書き残すことを優先したい。

  • 社内でよく来る問い合わせと、そのときの対応
  • どのサービスに、どの管理画面から入るか
  • 何を誰に聞けば分かるか

教わったことは、その日のうちに自分の言葉でメモにする。同じことを2回聞かずに済むし、そのメモがそのまま手順書の下書きになる。

情シスで頼られるのは、たいてい「前に書いておいたので」と言える人だ。手順書を残せる新人は、どこの職場でもありがたがられると思う。

資格は「話が早くなる」くらいの道具

ITパスポートや基本情報技術者は、取っておいて損はない。ただ、資格だけで採用が決まるわけではない。

効くのは、「この資格で学んだネットワークの基礎が、こういう問い合わせで役に立ちそう」と、面接で自分の言葉で説明できたときだ。並べた資格の数より、そっちのほうがずっと伝わる。

最初の会社で使い古しの低スペックPCを渡された話は、前に書いた。古いPCは我慢できる。でも、聞ける人がいない職場は、未経験だとたぶん我慢できない。

みなさんは、最初の職場を何で決めましたか?

未経験から情シスを目指すなら、給料や会社の規模より先に「教えてくれる人がいるか」を見てほしい。そこさえ外さなければ、あとはわりとどうにかなる。

情シスの引き継ぎ資料は3点で足りる 台帳・構成図・契約一覧の作り方

小さな会社で、ほぼひとりで情シスをやっている。SIerから社内SEに転職して、気づけば社内のITは「とりあえずあの人に聞く」ものになった。

頼られるのは悪い気がしない。ただ、ときどき考える。明日、自分が急にいなくなったらどうなるか。

たぶん、何も分からなくなる。どのサービスに誰の名前で契約しているか。ルーターの管理画面はどこか。GCPで動かしているWordPressの請求は、どのカードに来ているのか。全部、自分の頭の中にしかない。

情シスでいう「属人化」は、だいたいこの状態のことだ。

全部を書こうとするから、終わらない

引き継ぎ資料と聞くと、分厚いマニュアルを想像しがちだ。でも、それを作る時間があるなら、ひとり情シスはそもそも困っていない。

なので、書くものを分ける。

  • 作業: 誰がやっても同じ結果になるもの。アカウントの発行、契約の更新、ルーターの再起動
  • 判断: 状況を見て決めるもの。どのツールを入れるか、社員にどこまで許すか

困るのは作業のほうだ。判断は人についていてもいい。後任が自分で考えればいいし、むしろ考えてほしい。でも「どこに何があるか」が分からないと、考える前に止まる。

だから最初は、作業の「地図」だけ作る。具体的には次の3つ。

後任が最初に開く3つのファイル

1. アカウント台帳

契約しているサービスとアカウントの一覧。Excelでもスプレッドシートでもいい。列はこのくらいで足りる。

  • サービス名、用途
  • 管理者アカウント(どのメールアドレスか)
  • 認証情報の保管場所
  • 契約者、支払い方法
  • 多要素認証の端末(誰のスマホに紐づいているか)

大事なのは、パスワードそのものは書かないこと。台帳には「パスワード管理ツールの○○フォルダ」と場所だけ書く。Excelにパスワードが並んだファイルは、引き継ぎ資料ではなく事故の素だ。

意外に抜けるのが多要素認証の列。管理者アカウントの認証コードが前任者の個人スマホに届く設定のままで、パスワードが分かっても入れない。この地味な詰み方は、一度は耳にしたことがあると思う。管理者の認証は会社支給の端末に寄せるか、緊急用の管理者アカウントをもう1つ用意しておくと、この詰み方は避けられる。

2. ネットワーク構成図

1枚で全体が見えれば十分。回線、ルーター、Wi-Fi、NASやファイルサーバー、主なクラウドサービスを箱と線で並べる。それぞれの箱に、置き場所と管理画面のアドレスを書いておく。

きれいな図にこだわる必要はない。PowerPointの四角でも、手書きを撮った写真でもいい。「ルーターがどの棚にあるか」が分かるだけで、後任の最初の1日はだいぶ変わる。

ついでに、壊れたときの電話先も図の横に書いておく。回線のお客様番号と、プロバイダや保守業者の窓口。ネットが止まった瞬間に、それを探す余裕は誰にもない。

3. 契約一覧

ベンダー、契約内容、契約期間、更新の条件、解約の申し出期限、緊急時の連絡先。

アカウント台帳と似ているが、こちらは「お金と期限」の表だ。ドメインやSSL証明書、保守契約は、更新を落とすとサービスが止まる。しかも年に1回なので、誰も覚えていない。自分も覚えていない。

なので、契約一覧に行を足したら、更新日の1か月前にカレンダーの予定も入れておく。表は見に行かないと気づけないが、予定は向こうから知らせてくれる。

1日目は、アカウント台帳だけでいい

3つを一度にそろえようとすると、また終わらない。急ぐ順に、アカウント台帳から埋める。いちばん困るのは「ログインできない」だからだ。

手順書は、その後でいい。書くときは、自分のためではなく後任のために書く。「いつもの設定で」ではなく、どの画面のどのボタンかまで。読み返して「これ、入社したての自分が読んで分かるか」と考えると、だいたい省略しすぎている。

直すタイミングも決めておく。新しいサービスを契約したら、その場で台帳に1行足す。「あとでまとめて」は、まず来ない。

最後に、置き場所を決めて上司か総務に伝えておく。いい資料も、誰も場所を知らなければ存在しないのと同じだ。

属人化をなくすと、自分の価値が下がるような気がする人もいるかもしれない。でも実際は逆で、地図を残せる人のほうが、安心して休めるし、安心して辞められる。

辞める予定は、今のところない。たぶん。

「共有フォルダに入れません」が続く朝 情シスの切り分け3パターンと退職者アカウント

「昨日まで普通に開けてたフォルダが、開かないんですけど」

朝いちばんの問い合わせ。1件なら、まあそういう日もある。2件目が同じ内容で、3件目が別の部署から来たあたりで、嫌な予感が確信に変わる。

心当たりを探すと、だいたい見つかる。先週、誰かのアカウントを消していないか。

皮肉なことに、この手のトラブルは退職処理をきちんとやるほど起きやすい。辞めた人のアカウントを放置するのはまずい。だから退職日に消す。それ自体は真面目な仕事だ。ただ、そのアカウントが何を持っていたかまでは、消す瞬間には見えていない。

「入れない」の正体は、3つに分けられる

共有フォルダに入れない理由はいろいろあるが、入口は3つに絞れる。

  • 人の問題: フォルダの持ち主や、権限を付けていたアカウントが消えた
  • ルールの問題: 誰がどこまで共有してよいかが決まっていない
  • 端末の問題: その1台だけが見えない

最初に聞くのは「ほかの人は開けていますか?」の一言だけ。これで、3つのどれに当たりそうかがだいたい分かる。

何人に起きているかで、見る場所が変わる

1. 何人も入れない → 退職者アカウントを疑う

ファイルサーバーなら、アクセス権を個人のアカウントに直接付けていて、そのアカウントを消した、というのが典型だ。グループに付けておけば起きない。でも「急ぎだから今回だけ個人で」という設定は、なぜか何年も生き残る。フォルダのプロパティで「セキュリティ」タブを開き、名前の代わりに意味不明な英数字の列が並んでいたら、それが消えたアカウントの跡だ。

クラウドだと、もっと分かりやすい。OneDriveで個人が共有していたフォルダは、その人の持ち物だ。持ち主がいなくなれば、共有も一緒に消える。

Microsoft 365では、アカウントを削除してもOneDriveのデータは既定で30日間残る。この間なら管理者が中身を見て、必要なファイルを移せる。裏を返せば、30日を過ぎたら消える。保持期間はSharePoint管理センターで30〜3650日に変えられるので、ひとり情シスなら先に延ばしておいて損はない。

2. 一部の人だけ入れない → 共有のルールを疑う

誰が、いつ、誰に共有したのかが分からない。「とりあえずリンクで共有」が積み重なると、権限は誰にも説明できない状態になる。そこから1人分の設定を誰かが直すと、別の誰かが入れなくなる。

ここは技術よりルールで防ぐしかない。

  • 部署で使うファイルは、個人のOneDriveではなくSharePointやTeamsのチームに置く
  • 権限は個人ではなくグループに付ける
  • 社外への共有は、期限付きを基本にする

小さな会社だと、このルールを決めるのも守らせるのも情シスの仕事になる。ていうか、ほかに決める人がいない。

3. 1台だけ入れない → 端末を疑う

ほかの人は開けるのに、その人のPCだけ見えない。この場合は、見る順番をだいたい決めている。

  • 資格情報マネージャー: パスワード変更の後、古い資格情報が残っていて弾かれる。該当サーバーの資格情報を消して入り直すと、わりと片付く
  • ネットワークの種類: 接続が「パブリック」扱いになっていて、ファイル共有が通らない
  • 古いNASとの相性: Windows 11 24H2以降はSMB署名が既定で必須になるなど、古い設定のNASにつながらなくなった例が報告されている

アカウントを消すのは、最後でいい

再発防止で一番効くのは、退職者のアカウントを退職日に即削除しないことだと思う。

即削除は、セキュリティだけを見れば正しい。ただ業務から見ると、事故の種になる。なので順番を分ける。

  1. 退職日: サインインを止め、パスワードを変える(ここで不正利用は防げる)
  2. その後の数週間: 持っていたファイルや共有フォルダを洗い出し、部署や後任に移す
  3. 移し終えたら: ライセンスを外し、アカウントを削除する

入退社の連絡が総務からメール1通で来るだけ、という職場は多い。だからこそ、消す前に「この人の持ち物はどこにあるか」を確認する一手間を、手順に入れておく。

辞めた人のアカウントは、辞めたあとも少しだけ働いている。消すのは、その仕事を引き継いでからでいい。

Windows 11 24H2のサポートが終了 バージョン確認と25H2への更新手順

「Windowsのサポートが終わったってニュースで見たんですけど、うちのPC、買い替えですか」

朝いちばんにこう聞かれた。去年のWindows 10のときの記憶が残っているらしい。サポート終了と聞くと、だいたいの人は「買い替え」とセットで思い出す。

結論から言うと、今回はほぼ買い替え不要である。

終わったのは「Windows 11」ではなく「24H2」

Windows 11のバージョン24H2のうち、HomeとProは米国時間2026年10月13日で更新の提供が終わった。以降は月例のセキュリティ更新が届かなくなる。

ややこしいのは、終わったのがWindows 11そのものではなく「24H2という版」だという点だ。Windows 11は年に一度バージョンが上がり、版ごとにサポート期限がある。HomeとProは約2年、EnterpriseとEducationは約3年。だから同じ24H2でも、会社で使うEnterprise版は2027年10月まで更新が続く。家のPCと会社のPCで話が変わるのは、このためだったりする。

そして次の25H2は、中身の多くがすでに24H2の月例更新で配られている。KB5054156という小さな「有効化パッケージ」を入れて再起動すれば、25H2に切り替わる仕組みだ。OSを丸ごと入れ替える大型アップデートとは、重さがまるで違う。

なお、IT部門に管理されていない家庭のHome/Proには、25H2が順次自動で配信されている。再起動のタイミングは選べるので、気づいたら勝手に変わっていた、という人も多いと思う。

現場でやっている工夫

1. まず「winver」で今のバージョンを見る

聞かれたら最初にやってもらうのはこれ。Windowsキー+Rで「ファイル名を指定して実行」を開き、「winver」と入力してEnter。出てきた小さな画面の「バージョン」の横を見る。

  • 25H2と書いてあれば、もう何もしなくていい
  • 24H2なら、このあと更新する
  • 23H2以前やWindows 10なら、話が別になる(有効化パッケージは使えず、大型アップデート扱い)

電話口で説明するときも、この1行がいちばん通じやすい。設定画面の階層を口頭で案内するより、ずっと早い。

2. 24H2ならWindows Updateから入れる

「設定」→「Windows Update」→「更新プログラムのチェック」。準備ができていれば「Windows 11, version 25H2」のダウンロードとインストールの案内が出る。あとは指示どおりに進めて、再起動を1回。

仕組みとしては小さな更新なので、身構えるほどではない。ただ、念のため作業前に大事なファイルのバックアップだけは取ってもらう。こういうときに限って何か起きるのが、情シスの世界の物理法則だ。

3. 更新が来ない・失敗するときに見るところ

案内が出ない、途中で失敗する。そういう相談もそれなりに来る。見る順番はだいたい決めている。

  • 他の更新が残っていないか: 保留中の更新を先に全部入れてから、もう一度チェックする
  • 「最新の更新プログラムを入手する」: Windows Updateの画面にあるこのスイッチをオンにすると、案内が早く出ることがある
  • 段階配信と互換性の保留: 配信は少しずつ進むうえ、相性問題が分かっている機種には意図的に止められている。待つのが正解のこともある
  • それでもだめなら: 「設定」→「システム」→「回復」にある、Windows Updateで問題を修正する再インストールを試す。ファイルを残したまま修復できるが、バックアップは必須

会社のPCで更新を止めるポリシーを入れている場合は、自分で配信を止めていたというオチもある。人のことは言えない。

まとめ

サポート終了という言葉は強いが、今回の中身は「24H2から25H2へ、小さな更新を当ててね」という話に尽きる。winverで確認して、24H2なら更新する。やることはそれだけだ。

偉そうに書いておきながら、自宅の古いノートPCのバージョンを最後に確認したのがいつだったか、正直覚えていない。今夜、winverを打ってみます。

「電話しちゃいました」から始まるサポート詐欺 情シスの初動対応と偽警告の閉じ方

「あの、パソコンにウイルスの警告が出て、書いてあった番号に電話しちゃったんですけど」

内線の声が、いつもより小さい。こういう電話は、だいたい少し時間がたってからかかってくる。言われるままに何かを入れて、途中で「あれ、おかしいな」と気づいて、迷ったあげくに情シスへ、という流れだ。

まず言うことは決めている。「怒らないので、LANケーブルを抜いてください」。

警告画面は、よくできている

サポート詐欺の偽警告は、見た目がかなり本物っぽい。画面いっぱいに赤い表示が出て、警告音が鳴り、閉じるボタンが見当たらない。そこに「サポートセンター」の電話番号が書いてある。

焦っている人にとって、目の前にある番号は助け舟に見える。電話をかけると丁寧な口調の相手が出て、遠隔操作ソフトを入れるよう案内される。気づいたときには、画面の主導権が相手に移っていたりする。

正直なところ、引っかかった人を責める気にはなれない。あの画面を毎日見ている情シスでも、不意打ちで出されたら一瞬固まると思う。

しかも入口は、怪しいサイトだけとは限らない。普通に調べものをしていて、広告をうっかり押しただけで出てくることもある。偽のメールから誘導される手口も報告されている。「変なサイトを見るからだ」と言える時代は、もう終わっている。

問題は、本人が「怒られる」と思って報告を遅らせることだ。この手の対応は、最初の数分でやれることが一番多い。報告が翌日になると、やれることは確認と後始末くらいしか残らない。

現場でやっている工夫

1. 最初の電話で、ネットワークを切ってもらう

連絡を受けたら、何よりも先にネットワークを切ってもらう。有線ならLANケーブルを抜く、無線ならWi-Fiをオフにする。相手が遠隔で操作を続けられないようにするためだ。

電源を切るかどうかは、その場の状況で判断する。ただ、ケーブルを抜くのはほぼ迷わない。

そのうえで、本人に次のことを聞いてメモを取る。

  • 何時ごろ、どの画面が出たか
  • 電話で何を言われ、何をインストールしたか
  • パスワードやカード番号を入力・口頭で伝えたか
  • 支払いを求められたか

記憶はすぐに薄れる。責める調子にならないよう、「確認だけです」と前置きして聞くようにしている。

2. ソフトの削除と、パスワードの変更は別の端末で

入れられた遠隔操作ソフトを特定して削除する。どれが入ったのか分からなければ、無理に追いかけず、初期化を前提に考えたほうが早いことも多い。

並行して、そのPCで使っていたアカウントのパスワードを変更する。遠隔操作の間に入力した内容は、見られていた可能性があるからだ。変更作業は、問題のPCではなく別の端末から行う。

カード番号を伝えてしまった、支払いをしてしまった場合は、カード会社や金融機関への連絡も早めに案内する。ここは情シスだけで抱えず、総務や上長も巻き込む。

あとで同じ番号から電話がかかってくることもあるので、着信拒否も勧めておく。相手は「まだ作業が終わっていません」と、親切そうにかけ直してきたりする。最後に、そのPCで社内のファイルサーバーやクラウドにつないでいなかったかも確認する。被害が本人のPCだけで済んだかどうかは、ここで決まる。

3. 平時に「閉じ方」を練習してもらう

偽警告の多くは、Escキーを長押しすると閉じるボタンが出てくる。出なければ画面を一度クリックしてからもう一度長押しする。それでもだめならタスクマネージャーでブラウザを終了すればいい。

ただ、本番で初めてこれをやるのは難しい。そこで、IPAが公開している「偽セキュリティ警告画面の閉じ方体験サイト」を使ってもらっている。本物そっくりの画面が出て音も鳴るので、事前に音量を下げるよう伝えておくのがコツだ。昼休みの静かなフロアで鳴らすと、別の意味で注目を集めることになる。

社内に周知するときは、長い文章より「電話しない」「Esc長押し」「すぐ情シスへ」の3行が効く。添える一言は「怒らないので」。これが一番大事だったりする。

まとめ

サポート詐欺は、技術の問題というより、焦りにつけ込む手口だ。だから対策も、ツールより「早く言ってもらえる関係」をつくるほうが効く気がする。

偉そうに書いたが、自分も不意打ちで警告音が鳴ったら、たぶん一度は肩がびくっとなる。今週は体験サイトのURLを、社内チャットにそっと貼っておこうと思います。

情シスが現場で使うWindowsの裏技20選 Win+Rのコマンドとショートカット

「ネットワークの設定って、どこから開くんでしたっけ」

電話の向こうで、相手がスタートメニューをさまよっている気配がする。設定アプリを開いて、ネットワークを押して、詳細設定を押して……と案内しているうちに、お互い何を探していたのか忘れかける。

こういうとき、情シスの頭の中では「Win+Rでncpa.cplと打てば一発なのに」という言葉が回っている。言わないだけで。

裏技は、だいたい「近道」のことだ

Windowsの裏技といっても、隠し機能のようなものはあまりない。たいていは、マウスで何階層もたどる画面へ直接飛ぶ近道だったりする。

ただ、Windowsは更新のたびに設定画面の場所が少しずつ変わる。去年覚えた道順が、今年は通れない。だから情シスは、画面の場所ではなくコマンドとキーで覚えるようになる。そのほうが長持ちするからだ。

もうひとつ理由がある。電話で「右下の歯車を押して」と言っても、相手の画面に歯車があるとは限らない。キーの名前なら、どのPCでも同じだ。説明する側も、聞く側も、迷う場所が減る。地味だが、これが一番効く。

今回は、自分が現場で実際に使っているものを20個に絞って並べてみる。

現場でやっている工夫

1. 自分の手は「Win+R」で速くする

Win+Rで「ファイル名を指定して実行」を開き、次の文字を打つ。

  1. ncpa.cpl ネットワーク接続。IPアドレスやアダプターの確認に
  2. appwiz.cpl プログラムと機能。アンインストールはここが早い
  3. msinfo32 システム情報。機種名やメモリ量をまとめて見られる
  4. winver Windowsのバージョン確認。電話で一番よく頼む
  5. control printers プリンターの一覧
  6. devmgmt.msc デバイスマネージャー
  7. eventvwr.msc イベントビューアー。「何もしてないのに」の答え合わせに
  8. %temp% 一時ファイルの置き場所
  9. shell:startup スタートアップフォルダ。勝手に起動するものの確認に
  10. mstsc リモートデスクトップ接続

control printers は、環境によっては設定アプリのほうに案内されることもある。そこは更新次第なので、あまり期待しすぎない。

2. 電話サポートでは、相手に押してもらうキーを決めておく

画面が見えない電話サポートでは、口で説明しやすいキーが強い。

  1. Win+Shift+S 画面の一部を切り取る。エラー画面はこれで送ってもらう
  2. Ctrl+Win+Q クイックアシストの起動。画面共有の入口に
  3. Win+Ctrl+Shift+B 画面が真っ暗なときの、グラフィックの再起動
  4. Win+P 会議室のテレビに映らないときの表示切り替え
  5. Win+X 右クリックメニュー。ここから大体の管理画面に行ける

「ウィンドウズキーとシフトとエス」と3回くらい言うと、だいたい伝わる。同じ説明だけ上手くなっていくのは、情シスの宿命だと思う。

3. 社員に配ると、問い合わせが減るもの

最後は、自分ではなく社員に覚えてもらいたいもの。

  1. Ctrl+Shift+Esc タスクマネージャーを直接開く。固まったアプリを自分で閉じられる
  2. Win+L 席を立つときの画面ロック
  3. Win+V クリップボード履歴。最初に一度オンにする必要がある
  4. Win+Shift+矢印キー ウィンドウを隣のモニターへ移す。「画面が消えた」の大半はこれで戻る
  5. Win+ピリオド 絵文字と記号の入力。「→」や「※」も探せる

全部を配る必要はない。自分は、問い合わせが多かった順に3つくらいを選んで、A4一枚にまとめて配るようにしている。一枚に収まらないものは、たぶん読まれない。

まとめ

裏技は、知っている人だけが少し得をする道具だ。ただ、情シスが社員に配ると、その分だけ電話が鳴らなくなる。自分のための近道が、結果として全員の近道になったりする。

偉そうに並べたが、自分もいまだに設定アプリの中で迷子になる日がある。今日はひとまず、winver を電話口でどう伝えるか、言い方を考えてみます。

情シスあるある30選 毎日聞く「あのセリフ」と問い合わせを減らす仕組み

「すみません、パソコンが壊れたみたいで」

月曜の朝、この一言から一日が始まる。席まで行って再起動すると、何事もなかったように動き出す。お礼を言われ、自席に戻る途中でまた呼ばれる。

情シスをやっていると、聞くセリフはだいたい決まってくる。数えてみたら30個くらいあった。せっかくなので並べてみる。

毎日聞く「あのセリフ」30選

トラブル編

  1. 「パソコンが壊れました」(再起動で直る)
  2. 「ネットが遅いんですけど」
  3. 「何もしてないのに動かなくなった」
  4. 「エラーが出たけど、閉じちゃいました」
  5. 「プリンターが印刷しないです」(別のプリンターに送っている)
  6. 「Wi-Fiにつながらない」(機内モード)
  7. 「画面が真っ暗です」(モニターの電源)
  8. 「Excelが固まった」(ファイルが30MBある)
  9. 「メールが届かない」(迷惑メールフォルダにいる)
  10. 「昨日まで使えてたのに」

アカウント編

  1. 「パスワード忘れました」
  2. 「パスワードの変更を求められたので、前のに戻したい」
  3. 「ロックがかかりました」(入力5回目)
  4. 「スマホを機種変したら認証できない」
  5. 「共有フォルダが見えません」
  6. 「退職した人のファイルってどこですか」
  7. 「新しい人が明日から来ます」(明日)
  8. 「IDって何でしたっけ」
  9. 「Teamsに入れないです」
  10. 「このメール、開いて大丈夫ですか」(もう開いた)

なんでも屋編

  1. 「これ、情シスさんの担当ですよね」
  2. 「会議室のテレビが映りません」
  3. 「複合機の契約っていつまでですか」
  4. 「家のパソコンも見てもらえますか」
  5. 「Excelでできるでしょ」
  6. 「ちょっとだけいいですか」(ちょっとで終わらない)
  7. 「急ぎじゃないんですけど」(急ぎ)
  8. 「前の人はやってくれました」
  9. 「詳しい人に聞けって言われて」
  10. 「ITのことはよく分からないので」

書いていて、少し胃が痛くなった。

なぜ同じ問い合わせが繰り返されるのか

聞いてくる人が悪いわけではない。たぶん、調べる場所がないのだ。

社内のどこを見れば答えがあるのか分からない。だから一番手っ取り早い「情シスの人」に聞く。聞けば答えてくれるので、次も聞く。こちらも答えるたびに、同じ説明だけ上手くなっていく。

ひとり情シスだと、これがそのまま一日の時間を削っていく。対策は気合いではなく、仕組みのほうに置くしかないと思う。

現場でやっている工夫

1. よくある質問は、答えを1か所に置く

問い合わせを1週間メモしてみると、上位の10個くらいで大半が埋まっていたりする。その10個だけ、社内ポータルやチャットの固定メッセージに答えを書いておく。

最初から立派なFAQを作らなくていい。「再起動しましたか」を一番上に書くだけでも、呼ばれる回数は少し減る。

2. パスワードは、本人に戻してもらう

パスワード忘れとロック解除は、件数のわりに中身がほとんど同じ作業だ。Microsoft 365 ならセルフサービスのパスワードリセットを有効にでき、Google Workspace にも利用者が自分で復旧できる設定がある。

最初に復旧用の連絡先を登録してもらう手間はかかる。ただ、一度回り始めると、朝イチの「ロックがかかりました」がかなり静かになる。

3. 返信はテンプレートにしておく

「プリンターの確認手順」「新しい人のアカウント申請」など、毎回同じことを書いている返信は、テンプレートとして保存しておく。辞書登録でもメールの定型文でも何でもいい。

ついでに、新入社員のアカウント申請は「何日前までに」と期限をテンプレートに入れておく。明日来る人の話を、今日聞かないために。

まとめ

情シスあるあるは、笑い話であると同時に、仕組みが足りていない場所の目印でもある。同じセリフを3回聞いたら、そこが手を入れどころなのだと思う。

偉そうに並べたが、自分のFAQもまだ半分くらいしか書けていない。まずは今週の問い合わせを、メモに残すところから始めてみます。

情シスとは?仕事内容と「きつい・辞めたい」理由を中の人が書く

「情シスって、結局なにをする部署なんですか?」

新しく入った人にそう聞かれて、毎回ちょっと言葉に詰まる。パソコンを直す人、と答えれば半分は合っている。でも、半分しか合っていない。

正式には情報システム部門。社内のIT全般を支える部署だ。ただ、会社の規模によって中身はかなり違う。人数がいる会社なら担当が分かれているし、小さな会社なら全部ひとりで抱えていたりする。自分はどちらかというと後者寄りである。

仕事を分けてみると、だいたい5つ

ざっくり分けると、情シスの仕事はこのあたりになる。

  • ヘルプデスク: 「PCが重い」「パスワードを忘れた」への対応。社内の問い合わせ窓口
  • インフラ: ネットワーク、サーバー、PCやスマホの調達と管理
  • 業務システム: 会計や勤怠などのシステムの導入・運用、ベンダーとのやりとり
  • セキュリティ: アカウント管理、ウイルス対策、社内ルールづくり
  • DX・企画: 業務をITでどう変えていくかを考える仕事

最後のDX・企画が、いわゆる「攻めのIT」。求人票ではだいたいここが一番大きく書かれている。

ただ、現実はなかなかそうはいかない。ソフトクリエイトが2026年に発表した情シス向けのアンケートでは、運用管理などのノンコア業務に多くの時間を割いている人が74.5%。戦略的な業務に注力できている人は18.2%だったそうだ。

数字で見せられると、だいぶ身に覚えがある。

向いているのは、たぶんこういう人

技術に詳しいことは、もちろん役に立つ。でも、それだけで務まるかというと怪しい。

情シスに向いていると思うのは、こんな人だ。

  • 「よく分からないんですけど」と言われても、イラッとせずに聞き返せる
  • 調べるのが苦にならない。エラーメッセージで検索するのが半分趣味
  • 地味な作業をコツコツ続けられる
  • いろんな部署の人と、ほどよく雑談できる

特に最後が大事だったりする。困りごとは、だいたい雑談の中で先に出てくるからだ。

「きつい・辞めたい」と感じるのは、だいたいこの3つ

正直なところ、情シスを辞めたいと一度も思ったことがない人は少ないと思う。理由はだいたい決まっている。

1. 範囲が広すぎて、終わりがない

プリンターの紙詰まりから、セキュリティ事故の対応まで全部が守備範囲。複合機の契約も、会議室のテレビの映りも、「ITっぽい」という理由で回ってくる。境界線を引いた覚えはないのに、いつの間にか全部こちら側にある。

2. 「自分しか分からない」が増えていく

人が少ない職場ほど、仕組みが特定の人の頭の中にしか残らない。いわゆる属人化だ。休むと誰も分からないので、休みにくい。休みにくいので、さらに自分にしか分からないことが増える。

きれいな悪循環である。

3. うまくいっている時ほど、評価されない

トラブルがない状態が、情シスにとっての成功だ。でも、何も起きない日は「何もしていない日」に見えがちだ。

止まった時だけ名前を呼ばれる。そういう仕事なのである。

辞める前に、試せることもある

辞めるのも立派な選択肢だ。ただ、その前に少しだけ試せることもある。

まず、やっている仕事を書き出して見せること。問い合わせの件数や対応時間を簡単に記録するだけでも、「何もしていない」という誤解はかなり減る。

次に、手順を残して、作りすぎないこと。全部を自作せず、標準機能や外部のサービスに任せられるものは任せる。このあたりは以前「作れるけど、作らない」という話でも書いた。自分がいなくても回る部分を、少しずつ増やしていく。

それでも状況が変わらないなら、異動や転職を考えていいと思う。情シスの経験は社内SEの求人でも、ITを使う他の職種でも、意外と評価される。何でも屋をやってきた「雑用力」は、どこかで効いてくる。

まとめ

情シスとは何か。一言でいえば、会社のITまわりの「困った」を、だいたい全部引き受ける仕事だ。

きつい時期は、たしかにある。それでも誰かの「直った、ありがとう」で、少しだけ報われたりもする。

偉そうに書いたが、自分もまだ記録をサボりがちだ。まずは今週やった仕事を、メモに10行書き出してみます。

ひとり情シスが休むために選ぶ「作れるけど、作らない」

ひとり情シスが休むために選ぶ「作れるけど、作らない」

有給の申請画面を開いて、そっと閉じる

金曜の夕方、なんとなく有給の申請画面を開く。来週の火曜あたりなら行けるかもしれない、と思ってカレンダーを眺める。

火曜は新入社員2名のアカウント作成、水曜は返却PCのキッティング、月末は資産の棚卸し。そして頭の片隅で声がする。「あのバッチ、火曜の朝に落ちたら誰が見るんだ」。

結局、申請画面はそっと閉じる。ひとり情シスをやっていると、この動作だけが妙に上手くなっていく。

採用は出している。でも、決まらない

求人はずっと出している。それでも情シスの採用は本当に難しい。

理由は薄々わかっている。まず、求められる範囲が広すぎる。ヘルプデスクからネットワーク、SaaS管理、セキュリティ、監査対応、たまに複合機の紙詰まりまで。求人票に全部書けば誰も応募してこないし、絞って書けば入社後の現実とズレる。

そして、候補者の技術を評価できる人が社内に自分しかいない。面接官も自分、上司候補も自分、同僚候補も自分。何度やっても、この構図は落ち着かない。

さらに「ひとり情シス」という言葉自体が、転職市場ではやや警戒される単語になっている。地雷になりうる理由を、こちらが一番よく知っているのがつらいところだ。

ひとり情シスで本当にきついのは、この2つ

技術的に難しい仕事がきついのではない。きついのは、たぶんこの2つだけだ。

1つ目は、相談できないこと。

「このSaaS、SSO必須にするか」「このPC、いったん隔離するか」「この申請、例外を認めるか」。判断そのものより、決めた責任が全部自分に返ってくることが重い。合議にすれば正解が出るわけではないけれど、少なくとも一人で背負わなくてよくなる。その「一人で背負わなくていい」が、ひとり情シスにはない。

2つ目は、休めないこと。

止まったときに動ける人が自分しかいない。旅行先で電波を確認してしまう、あの落ち着かなさは経験した人にしかわからないと思う。

休むために必要なのは、実は「作らないこと」

何年かやってきて、たどり着いた結論がある。休むために必要なのは、引き継ぎ資料でも自動化でもなく、作らないことだった。

何かを作ると、必ず属人性が生まれる。

GASで組んだ申請フロー。PowerShellのキッティングスクリプト。棚卸し用に育てすぎたExcelマクロ。作った瞬間は社内の英雄になれる。「便利になった」「さすが」と言われる。

でも半年後、それは静かに重りに変わる。「これ、動いてはいるけど、中身をわかっているのは自分だけだよな」と。ドキュメントを書いても、結局直せるのは自分だ。作れば作るほど、自分の休みが減っていく。

だから、作れるのに作らないという選択肢を持てるかどうかが、ひとり情シスの寿命を決めると思っている。技術がある人ほど、つい作ってしまうのだけれど。

現場でやっている3つの工夫

1. 「標準機能でできる80点」を選ぶ

自作すれば100点にできるとしても、SaaSやIdPの標準機能で80点なら標準機能を採る。細かい不満は残るが、ベンダーが直してくれる仕組みは、自分が寝ている間にも直る。自作した100点は、自分が起きているときしか直らない。

2. 作るのは「止まっても事業が止まらないもの」だけ

自分の作業を楽にするスクリプトはどんどん作っていい。壊れて困るのは自分だけだからだ。

一方で、入社処理、権限付与、認証、請求まわりのような「止まると事業が止まる」場所は自作しない。ここはお金を払って外に預ける。予算の相談をするときは、機能の話ではなく「自分が休めない理由」として説明するようにしている。属人化のコストは、退職リスクという言葉にすると経営層にも伝わりやすい。

3. 相談先を社外に持つ

社内に相談相手がいないなら、社外に作るしかない。情シス系のコミュニティ、勉強会、導入ベンダーの担当者。「うちはこうしてます」が一言聞けるだけで、判断の重さは半分になる。

一人で責任を取る構造はすぐには変えられなくても、一人で考える状態は今日から変えられる。

もし自分が転職する側なら、面接でこれを聞く

採用が決まらないまま候補者と話していると、逆の立場もよく考える。自分が受ける側なら、聞きたいのはこの3つだ。

  1. 「情シスが止まったとき、誰が代わりに動きますか」——人数より、こちらのほうが実態がわかる
  2. 「社内で自作されているツールはどれくらいありますか」——属人化の在庫量がわかる
  3. 「情シスの予算は、誰がいくらで決めていますか」——決裁ラインの近さは働きやすさに直結する

「情シスは何人ですか」だけでは、入社後にまた一人になる未来を防げない。

まとめ

作らないのはサボりではなく、設計だと思っている。……と、偉そうに書いておきながら、今日も気づいたらスプレッドシートに関数を仕込んでいた自分がいる。手が勝手に動くのは、もはや職業病かもしれない。

それでもまずは、来月どこかで1日だけ有給を取ってみる。その日に何も落ちなければ、それは「作らなかった判断」が正しかったという、いちばん静かな成果報告になる。

そして願わくば、来年の今ごろは、この記事を隣の席の同僚と笑いながら読んでいたい。求人票、もう少し書き直してみます。

「Excelでできるでしょ」に何回心を折られたか

「Excelでできるでしょ」に何回心を折られたか

「その業務、ツール入れれば月20時間は浮きますよ」

胸を張って提案した資料を、部長がひと言でひっくり返す瞬間がある。

「うーん、それ、Excelでできない?」

情シスあるあるの中でも、地味にボディブローのように効いてくるのがこれだ。殴られた側は毎回同じ場所を押さえてうずくまっているのに、殴った側は毎回初めて言ったみたいな顔をしている。そして翌月、また似たような提案書を作り直している自分がいる。会議室を出た瞬間、資料をそっと閉じて「まあ、いつものことか」とつぶやくのも、もはや一種の儀式になっている。

「Excelでできるでしょ」が飛んでくる瞬間

たとえば申請フローの電子化。紙とハンコで回っている稟議を、ワークフローツールに乗せませんかと提案する。承認漏れも防げるし、どこで止まっているか一目でわかる。悪い話ではないはずなのに、返ってくるのはだいたいこれだ。

「今のExcel台帳で十分回ってるよね?」

資産管理システムの導入を打診したときも同じだった。PCの棚卸しのたびに現場を走り回り、シリアル番号を目視で確認し、誰が今どの端末を使っているか分からなくなる。そのつらさを訴えても、「一覧表があるならいいじゃない」の一言で片づけられる。一覧表、確かにある。更新が半年止まっているだけで。

極めつけは、月末に発生する集計作業をRPAで自動化しようと提案したときだ。人手を介さなければ入力ミスも減り、担当者の残業も減る。データも用意して説明した。返ってきたのは「今の担当者、慣れてるから大丈夫でしょ」だった。慣れているのと、消耗しているのは、実は同じ意味だったりする。

なぜ「Excelでいいでしょ」は繰り返されるのか

経営層や他部署から見ると、Excelは「すでに払ったコスト」であり、新しいツールは「これから払うコスト」だ。目に見える請求書が発生する話には敏感になるのに、情シスが毎月何時間も台帳更新や手作業の集計に溶かしている工数は、誰の見積書にも載らない。見えないコストは、存在しないコストとして扱われがちだ。

加えて、現場の苦労は数字にしないと伝わらない。「大変なんです」だけでは感想文で終わってしまう。決裁権を持つ人が欲しいのは、体感ではなく比較できる数字だ。情シス側は日々の苦労が当たり前になりすぎて、それをわざわざ数字にする発想自体を忘れがちでもある。さらに言えば、「Excelでもできる」は事実として間違っていないことが多いのもややこしい。できるかできないかの話ではなく、その裏でどれだけの人の時間と神経がすり減っているかという話をしているのに、噛み合わないまま会話が終わってしまう。

現場でやっている工夫

心が折れっぱなしでは仕事にならないので、ここ数年でいくつか型ができてきた。

1. 工数を時給換算して見せる
「棚卸しに年間120時間、時給換算で◯万円かかっています」と数字にすると、急に会話の温度が変わる。感情論ではなく経費の話にすり替えるのがコツだ。ついでに「このまま放置すると来年はもっと増えます」と一言添えると、緊急度も伝わりやすい。

2. 無料枠・低コストでまず小さく試す
いきなり本格導入の稟議を通そうとすると、金額の大きさだけで却下される。無料プランや数千円のSaaSで一部署だけ試験運用し、実績を作ってから広げる方が話が早い。小さく始めて、小さく成功する。これに尽きる。

3. 巻き込む部署を増やしておく
情シス単独の要望だと「情シスのわがまま」に見えてしまう。実際に業務で困っている現場の担当者を一緒に連れて説明すると、説得力が一段違ってくる。「困っているのは情シスだけではない」という事実が、思った以上に効く。

それでも通らないこともある。そういうときは、また来年の予算会議まで、心の中にそっとしまっておく。

まとめ

「Excelでできるでしょ」は、悪意から出てくる言葉ではないのが厄介なところだ。むしろ「まだそんなに困ってなさそう」に見えているという、ある意味では平和な証拠でもある。

とはいえ、折れかけた心を何度も立て直しながら数字を作り、味方を増やし、小さく実績を積む。地味なようで、それこそが情シスの本業なのかもしれない。今日もExcelの新しいシートを一枚追加しながら、来年こそはと心の中でつぶやいている情シス担当者は、きっと私だけではないはずだ。